ここ数年の日本酒ブームに乗って、日本酒を飲むことが増えたという人も多いのではないでしょうか?
日本酒が苦手という人にも飲みやすい味や、洋食にあうワインのようなものまで、日本酒のバリエーションはどんどんと広がっています。
ところでそんな日本酒を、みなさんはどんな器で飲んでいますか?
実は酒器(お酒を飲むための器)にちょっとこだわると、その楽しみは何倍にもなるんです。
今回はそんな日本酒と酒器の魅力に惹かれ、酒器専門のネットショップ『酒器屋.com』のオーナーでもある深野ちひろさんにお話を伺いました。
-深野さんはもともと、お酒に関わるお仕事をされてきたのですか?
「大学卒業後に入ったのは、お酒とは全く関係のない電機メーカーでした。
その時は比較的時間があったので、大好きだったフランスにしょっちゅう行って、食べ歩き・飲み歩きを楽しんでいました。
その当時はワインが好きで、その延長で料理やお菓子、チーズなどについても勉強しました。
そんなことを10年くらい続けていたのですが、だんだんと日本酒の方にも目が向き始めて興味が湧いて、日本酒の輸出もしている会社に転職しました」
-お酒を軸にしたような人生ですね。その会社では酒器も扱っていたのですか?
「メインはあくまで日本酒でしたが、付随的に酒器の取り扱いもしていました。
そのお仕事の中で酒器を作られている方々との交流も増えてきてその魅力に目覚め、酒器販売を手掛ける会社を興しました」
-酒器専門のネットショップというのはとても珍しいと思いますが、今はどのくらいの商品数を扱われているのでしょうか?
「180種類程度扱っています。商品は、実際に作られている職人さんたちとお話した上で、納得したものだけを厳選して販売しています」
-どんなものがよく売れていますか?
これはとても薄いガラスでできているのですが、電球を手吹きガラスで製造していたガラスの老舗メーカーである大正11年創業の松徳硝子株式会社が作っています。
舌あたりも良く、お酒がすっと喉に入っていく感じです」
-基本的な質問で恐縮ですが、器によって日本酒の味わいは変わるものでしょうか?
「まったく変わります。
日本酒の味わいを決める一つの要素として香りがありますが、酒器の形によってその香りが外へと広がるものや、内側にこもるものなどいろいろあります。
また酒器の素材や形状によって口に付けた時の感触が変わるので、その味も違って感じられるようになります」
-言われてみると、なんとなくわかる気がします。
「また実は味わいをどのように感じるかということには、視覚も大きく影響します。
例えばシャープな形状の器を見ると、「きっとキリッとした味なんだろうな」と頭がイメージします。
逆に丸みを帯びた器だと、「まろやかな味だ」とイメージします。
そのイメージを持って飲むので、味わいもそのように認識されるんです」
-それはおもしろいですね。
「そういった酒器の楽しさを実感していただくために、同じお酒を違う酒器で飲んでみる『酒器あそび』というイベントなどを、定期的に行っています」
-最後に、読者へのメッセージをいただけますでしょうか?
「日本にはもともと、料理によって多種多様な食器を使い分けて、それぞれの料理をよりおいしくいただけるように工夫をしてきたという文化があります。
日本酒もその文化の中で育まれてきたものなので、ぜひお気に入りの酒器でおいしい日本酒を楽しんでほしいですね。
そういった時間は自分を取り戻すための貴重な“ひとり時間”になると思います」
◆編集部の一言 |
職人さんのこだわりが込められた小さな酒器の数々。おいしい日本酒をお気に入りの酒器で飲むというのは、ちょっと贅沢な気分になれそうです。今回より、深野さんによるひとり飲みを楽しむための連載コラムもスタート。どうぞご覧ください。 コラムはコチラ |