これまで介護保険の仕組みや、実際の介護現場でどのようにお金が掛かってくるか説明させて頂きましたが、これから2回に渡り「お金」にフォーカスして、その準備のヒントを解説させて頂きます。
前編は、ご自身のこれからに備える話です。
「ゆとり老後」のためには○千万円の貯蓄が必要 というポスターやチラシを金融機関等で見られたことがある方は多いかと思います。
定年退職後は趣味を思う存分満喫したい。
介護のために80代以降にも貯金をしっかり残したい。
等々、自由に使える貯蓄は多いに越したことはありません。
日本の平均寿命は男性79歳、女性86歳。
男性だと再雇用延長で65歳まで働いたとしても約20年。女性はさらに長く30年近く老後の時間を過ごすことになります。
仮に年間300万円(1か月あたり25万)の生活維持費が掛かるとしたら、30年間で9000万円。
趣味を満喫するゆとり老後と言ったら1億円を超えてくる計算です。
勿論これほど多くのお金を蓄えるのは至難の業。
ではいったい幾らあれば安心の老後を過ごせるのか?足りない金額はどう調達するのかを見ていきます。
①最初に確認して頂きたいのはご自身の年金がいくら受け取れるかということ。
日本年金機構から毎年1回誕生月に、これまでの年金加入期間や加入実績に応じた年金額を通知してくれる『ねんきん定期便』が届きます。
これまで封も空けていないといった方は、ぜひ中身をチェックしてください。
[老齢基礎年金について]
老齢基礎年金とは、国民年金に加入し、要件を満たした方が所定の年齢になってから受け取る年金のことです。
20歳から60歳までの40年間で、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が25年以上であることが受給条件です。(昭和16年4月2日以降生まれの方)
原則として65歳から支給開始となりますが、60歳から減額された年金の繰り上げ支給や、66歳から70歳までの希望する年齢からの増額された年金の繰下げ支給制度もあります。
因みに平成26年4月からの年金額は満額支給で77万2800円(年額)です。
なお老齢基礎年金に上乗せされる厚生年金や企業年金(厚生年金基金、確定給付年金、確定拠出年金等)については、ご勤務先の年金制度により異なります。
詳しくは日本年金機構のホームページでご確認下さい。
②年金で受け取れる目安が分かったら、次に老後30年間に必要なお金のシミュレーションをしてみましょう。
考え方としては、
【収入+現在の貯蓄額-支出=不足する老後の必要額(新たに貯蓄すべき金額)】
です。
収入項目:年金、退職金、その他収入、個人年金等
支出項目:生活費、住居費、趣味娯楽費、交際費等
さらに生活費を細かく見てみると、
食費・家賃・水道光熱費・交通費・通信費・保険医療費・被服費等に分けることができます。
人によっては教育費や車両維持費、ペットにかかる費用なども計上しなければならない方もいるでしょう。
インターネット上で無料のライフプラン表も取り出せますが、きちんと算出したい方はファイナンシャルプランナーへの依頼をお勧め致します。
生活費には節約できるものとできないもの、老後になるとかえって増えるものの三種類があります。
食費、被服費、通信費、交通費は節約できます。
住居費、光熱費はそれほど節約できず、医療費は大きく増えてしまうことを織り込んでおきましょう。
③老後資金の準備方法
老後の入りと出が分かったら次は、必要額の貯蓄方法です。
代表的な方法として、銀行で行う定期預金がローリスクローリターンの代表と言えます。
大手都市銀行の金利が約0.025%。インターネットバンクでは0.300%という定期もあります。(H26.9月現在)
リスクを取れる方ならば選択肢は広がります。
運用をプロに任せてしまう投資信託や、毎年100万円までの非課税枠が魅力のNISA(ただし制度継続期間は2014年から10年間なので注意)、不動産投資信託のリートや賃貸マンション経営等あります。
いずれにせよ老後は誰にも必ず訪れます。
中長期での運用になってきますので、いざお金が必要になった際に元本を大きく割ってしまう運用は考え物です。
中長期だからこそリスクが取れるという考え方もありますが、リスクの高い運用は余裕資金で行う様心掛けて下さい。
老後資金とは別に、自分が要介護状態になった時のための備えをしておきたいという方には、生命保険を活用した準備方法があります。
民間介護保険では一定の要介護状態になった場合に「介護一時金」、「介護年金」、「一時金と年金の併用」で支給される保険があります。
(前回コラム参照)
ただし公的介護保険認定に連動して給付を受けられるタイプが多いので、介護保険制度の変更により将来給付が難しくなる可能性もありますので注意が必要です。
生命保険ならば、解約返戻金がしっかり貯まる終身保険や、個人年金保険で現役時代から備える方法も確認しておいて下さい。
生命保険控除の制度は活用したいメリットです。
吉田 要 さん | ![]() |
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獨協大学経済学部経営学科卒業 ファイナンシャルプランナー(AFP) |