親の介護で大変なことは、腹を割って話し合うこと。

老後の希望や現在の貯蓄額・年金額についてきちんと話し合えたら大きな前進です。
一般的に高齢者は自尊心が強く、年を取っても子供の世話にはならないと考えている方が多いもの。
「老いては子に従え」とは分かっていても相談しにくい親の気持ちを汲んで、遠回しに皆様から話題を振ってあげて下さい。きっと相談に乗ってほしかった筈です。

 

では老後・介護で必要な費用を見てみます。
いつ終わりが来るかわからない介護の費用は正確にいくら必要というのが難しいので、参考として私が見てきた一般的な例を紹介します。

 

[85歳女性、脳卒中にて入院。退院後要介護度4の認定]
・入院期間が2カ月程で個室。費用負担が月20万円程(医療費が高額になる場合、治療内容によっては高額療養費制度(*1)が利用できます)
・退院後の介護サービスの自己負担利用料4万5千円/月
脳卒中の場合、リハビリを行って在宅介護への復帰を目指すことが多いので、介護老人保健施設(老健)(*2)を活用するケースが多いです。

 

(*1)
高額療養費制度
公的医療保険における制度の一つで、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度。
詳しくは厚生労働省ホームページをご参照ください

 

(*2)
介護老人保健施設(老健)
介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すために、看護・介護・リハビリテーション、また栄養管理・食事・入浴などの日常サービスまで併せて提供する施設。
初期費用は無し。月額3 万円~13万円、個室や相部屋がある。


[90歳女性、独居、認知症で要介護度2]
・近所に子供が住んでいる為、なんとか一人暮らしが出来ている。
週3回デイサービスを活用し、訪問介護も利用。介護サービス自己負担利用料2万円/月
この方はクーラーの操作が分からなくなられており、夏の熱中症が心配でした。

デイ職員・訪問ヘルパー・家族がタイマーを活用しながら交代で見守っておりました。
家族は一人暮らしをさせておくことに限界を感じていたので、施設入居を検討され始めておりました。
結果的に特別養護老人ホーム(特養)の入居に時間がかかりそうなので、入居金の安い有料老人ホームに決まりそうです。


[84歳女性、独居、軽度の認知症、杖歩行で要介護度1]
・まだまだご自身で何でも出来きる方ですが、癲癇(てんかん)の持病をお持ち。

ご家族が遠方の為フォローが出来ておらず、たまに薬の飲み忘れがあり発作を起こされることがありました。
・訪問ヘルパーとデイサービス送迎時に、薬の飲み忘れがないか毎日チェック。

緊急時の搬送先や連絡方法について、ご家族と事前によく確認して対応。

介護サービス自己負担自己負担料1万5千円/月
・子供達は同居が難しいと考えており、将来的には施設入居させたい希望を持たれています。都内に自己所有のマンションがあり、売却して有料老人ホームの入居金とその後の必要費に充てられてはとご提案しました。

 

施設に入居をしない場合、在宅での介護となります。
この場合、自宅のリフォームについても考える必要があります。
長年住み慣れた家のほとんどはバリアフリーとは無縁です。
介護保険の制度で改修費用に上限20万円の補助制度がありますが、家の中の全面バリアフリー化は大きな費用がかかります。
手すり設置工事だけなら20万円以内で収まるケースが多いですが、浴槽の改修、段差解消等大掛かりな改修を行う場合は地域包括支援センター等でよく相談の上、親がお住まいの市町村の税制優遇や助成金をよく確認しましょう。
そして信頼出来るリフォーム業者を見つけることをお勧めします。

その際バリアフリー改修実績がどれ位あるのかを聞いてみましょう。

 

●介護資金を用意するには
代表的な介護モデルを知ってどの程度の費用がかかるのかを理解した後は、どう準備するかです。

潤沢な貯蓄があれば取り崩しながら日々の自己負担分に充てていくことが出来ます。

無い場合は自前で用意しなければなりません。

 

① 助成金・免除申請の漏れ等を確認した後にまず思い付くのは「介護ローン」です。
金利3%~5%くらいの商品が多いようです。決して低い金利ではないので、資金計画をよく検討し無理なく返済が出来る範囲で借り入れすることが大切です。

 

② 保険のチェックも忘れてはなりません。終身保険・養老保険などの主契約に解約返戻金が貯まっているかをご確認下さい。
一般的に生命保険は死亡したらお金が下りると思われていますが、この死亡時の保障を無くし、解約一時金でまとまった資金を作る方法もあります。
また保険の種類によっては、払い込み満了時点で介護保障に移行できる商品もあります。他にも「契約者貸付」という制度があります。こちらは解約返戻金が原資となり3%前後で貸し付けてくれます。
保険証券を眺めているだけでは分かりにくいので、保険会社のカスタマーサービスを積極的に活用しましょう。

 

③ 「リバースモゲージ」という金融ローンがあります。
一部の自治体や金融機関で取り扱われており、現金はないが持家があり介護資金を準備する必要がある場合有効です。
持家を担保に、その資産価値の範囲で貸し出してくれ、死亡時に一括返済するというのが基本です。
収入の限られているシニア層が組めるローンとして利用価値は高いと思います。
たとえばご両親のどちらかが要介護状態となり、施設入居に一時金が必要なケースで活用できます。元気な配偶者は自宅で生活を続ける選択肢が増える訳です。
注意点としては不動産の担保価値は土地だけで評価されることが多く、マンションや郊外の土地は評価されない可能性があります。また借入金は複利で毎月利息が貯まっていくことになる為、長生きのリスクや担保割れのリスクがあります。

 

④ 最後は「親族間の話し合い」だと思います。
ご両親の貯蓄・年金額から不足分を計算し、ご自分がいくらまでなら支えられるかをしっかり話し合いましょう。
実際の介護を兄弟姉妹に任せる場合、金銭を負担することで介護者のサポートをしていることになります。


一年間連載させて頂きましたこのコラムも今回が最終回となります。

将来誰にでも訪れる介護の世界の話を、介護現場に携わるファイナンシャルプランナーとしてお届けさせて頂きました。

コラムを通じ、親の介護の備えやご自身の備えに加えて、世の中の介護事情がどのように変化しているかについても関心を持って頂ければとても嬉しく思います。
ありがとうございました。

 

吉田 要 さん koro_yoshida_2

獨協大学経済学部経営学科卒業 ファイナンシャルプランナー(AFP)
平成25年6月より介護マネーに特化したファイナンシャルプランナー事務所 レイズコンサルティング株式会社を開設。また東京都江東区内にてデイサービスホーム(通所介護施設)も運営し、実際の介護の現場にて多くの高齢者の方々の 介護援助も行っている。