今回は自分の経験や実際に見聞きしてきた事例をもとに、「介護が始まると起こること」について触れたいと思う。
これらは介護をしていない方にとっては、ニュースやドラマの出来事のように思うかもしれないが、介護が始まれば、自分自身にも起こる可能性がある問題である。

 

●介護離職

 

介護をしなければいけない状況で仕事に支障が出たり、制度を知らなかったり、勤めている先に介護をサポートする制度自体がないこともある。

また一人で抱え込んで介護をしていて、カミングアウトできずに追い詰められて離職するケースも。
毎年、約4万人から10万人が家族の介護ために仕事を辞めているといわれている。

働きながらの介護はとても大変。しかし、介護離職にはリスクが多くある。

[参考文献] 内閣府男女共同参画局 総務省統計局 ([完全失業者]第2-5表)

 

①介護うつ・虐待のリスク

介護が中心の生活になり、介護者の負担やストレスは発散されにくく、ため込んで頑張ってしまうこともある。

自覚がなくても、知らず知らずのうちにため込んでしまうことが多いので気をつけなければならない。
介護が始まると意外と関わる他人が多く、自宅にいつも誰かが出入りしている感じがする。

また、要介護者がサービスを利用している間に、自分の用事や生活用品の買い物等を済ませなければならないので、時間的に制限も多い。

思いきらないと外出も最低限しかできなくなってしまう。

こういった小さな精神的負荷が積み重なり、うつや虐待につながるケースは少なくない。

 

②再就職が困難

介護が終わってからの再就職となると、その長さや年齢によっては、再就職のチャンスは多くはない。

経験を活かしキャリアチェンジするという選択肢もあるが、介護前の経験での再就職となると、かなり難しい現状に。

 

③経済的困窮

介護にかかる費用は介護保険だけでは賄うのは難しい。

利用したサービスの1割負担、医療費、食事代等の実費分、紙おむつ等の日用品、生活費、食費、交通費等の出費がある。

親の年金だけでは賄えないことも多く、親や自分の貯金を切り崩しているということも少なくない。

 

 

●介護疲れ・介護うつ・共倒れ

 

介護を続ける中で、介護をする側が疲れ果ててしまい、うつ症状や病気になり、仕事・介護・生活に支障が出てくることもある。
2005年に厚生労働省が行った、在宅で親族などの介護を行っている人を対象とした調査によると、4人に1人が介護うつ状態にあるという報告も。


私自身は仕事を続けながらの介護で、疲れているはずなのに眠れない・睡眠が浅く寝付けないまま朝ということが続き、医師に相談し、軽い睡眠導入剤を処方してもらっていた時期があった。

肉体的にも精神的にも辛く、介護者の重い病気が見つかり、入院や療養が必要になり、共倒れしてしまうケースも多くある。

[参考文献] 日本福祉大学社会福祉学部 湯原悦子 「介護殺人の現状から見出せる介護者支援の課題」

 

●介護ロス症候群

koro_sakuma_20150910_2介護を一生懸命することが生きがいになってしまったり、思いを込めて介護をしていると、介護をしなくてもよくなった時、喪失感を感じてしまうケースもある。
一生懸命に介護をしていても、人には最期が必ず訪れる。

それまで生活のすべてだった要介護者を失ったことで、今まで頑張ってきた分、どのようにしていいのかわからなくなったり、そのことによってうつ状態になってしまうこともある。


要介護者が最期の時を迎えても介護者にはまだ、人生がある。

介護をしているときから、要介護者に関することが人生のすべてにならないように、自分の時間やその後のことを考える時間を持っておいた方がいい。

 

●家族崩壊・金銭トラブル

 

立場が違う兄弟姉妹でもめることもある。

介護をした・しない、親の相続、介護によって起こる問題から、離婚や家族の縁が切れてしまう例もある。

肉親が故の感情や考えの違いがどうにもできないほど、こじれてしまう例も少なくない。

仲が良かった家族でも、面倒を見た、見てない、見させてくれない等、それぞれの思いもあり、複雑なのだ。

そしてそこにまた、お金の問題も絡んでくる。

 

全くないか、有り余る資産がある、家族間でしっかりとしっかりと話し合いができている等のケースでは起こらないこともあるが、実はかなり身近な問題である。

介護している親の年金が少ない、土地や家はあるけれど現金がない、家族間で介護に関して不平不満がある、相続に関して納得していない等、きっかけは様々。

それぞれに気持ちも、考えも、思惑もあるので、こじれると修復が難しい問題になるケースも珍しくない。

一見、お金の問題に見えても、そこには数十年にわたる家族としての歴史があり、一概にお金だけの問題でもないのではないかと考えさせられることも。
自分が兄弟姉妹の一番上だから、親を最期まで看取って当然と思っている責任感の強い長子。

一見ありがたいことだが、ほかの兄弟姉妹から見れば最期まで親を独占していると、感じている場合もあった。

高齢の親をほかの兄弟姉妹が田舎で面倒を見てくれていて、自分は週末のみ東京から遠距離介護で10年以上サポートし続けている方もいた。

100歳を超えて認知症のある親だが、週末しか来ない娘にはまだ在宅での生活が可能に見え、親もそのことを望んでいた。
ほかの兄弟姉妹に在宅での介護が限界を超えているので、施設を考えたいと言われ、親は望んでないと話したら、ものすごい非難を浴びた。

親のことを考えてはいても、兄弟姉妹のことまでは考えられていなかったのだ。

 

親が亡くなったとたんに財産分与について裁判を起こされたケースもある。

介護を全くしなかった兄弟から、遺産の分割がおかしいと裁判を起こされたのだ。

介護をしなかったのではなく、全く関与させてくれず、親のお金を不当に搾取していた、というのだ。

 

介護という状況になったときのために、自分の人生と親や周りの兄弟姉妹等の人生を少し距離を取りながら考えてみてほしい。

できること・できないこと、すること・しないことを人間関係や考え方も含め把握しておくことも、いざという時のためになる。

そしてできるだけ最悪な状況を避けられる手段を模索しておいてほしいと思う。

 

 

●親の介護とキャリア 気になる話題

「知っておきたい区市町村関連団体事業」

 

介護保険では対応できない生活の困りごとがあった際、相互協力の活動、社会参加等、区市町村の関連団体がサービスとして提供している活動もあります。
長く続く可能性のある介護、地域の方の協力を得ることも介護のコツの一つです。

 

○シルバー人材センター
健康で働く意欲のある高齢者の方が、長年培ってきた技術、経験、技能や豊富な知識を活かし臨時的、短期的な仕事を有償で行っています。
襖・障子の張替、除草作業、簡単な大工工事等、介護保険では頼めない仕事をお願いできます。

 

○住民同士の支えあい活動(社会福祉協議会)
援助を提供する側と援助を必要としている側の双方が会員として登録し、家事援助や介護サービスを提供しています。

話し相手や買い物等を依頼できるサービスを行っているところもあります。

 

○ボランティアセンター
個人や団体等、地域で活動するボランティアのサポートをしています。
話し相手や、外出の付き添い等ボランティアを必要としている人の相談にものってくれます。

また、地域活動への参加等を通しての社会活動の参加等、ボランティアとしての相談にも応じてくれます。

 

○福祉車両の貸し出し
高齢者等で移動に車両が必要な方などに車いすごと乗れる車両の貸し出しをしています。

走行した分のガソリン代程度で借りることができます。
運転する方がいない場合等は、運転ボランティアを手配してくれる場合もあります。

 

たいていの市区町村で、「高齢者のしおり」や「シルバー情報」等の名称の高齢者向け情報が載ったパンフレットを配布しています。

それぞれ、その区市町村で行っている高齢者向けの情報が記載されています。

役所や地域包括支援センター等でもらっておくと便利です。

市区町村・関連団体で使えるサービスがあるかを調べたうえで、足りないことを、どのようにしていくのかを考えていくと、金銭面でも、地域の情報を得るためにも役立つこともあると思います。

 

※市区町村によってサービス内容が異なる場合があります。

ホームページや高齢者向けのパンフレット等で内容を確認、関係機関に問い合わせる等ご確認をお願いいたします。

 

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佐久間 理央 さん 20141020_sakuma
POLE・STAR株式会社 ディレクター
大正大学大学院人間研究科修士課程修了(社会福祉学)。
私立国際武道大学、社会福祉法人武蔵野療園、社会福祉法人渋谷区社会福祉協議会等を経て現在POLE・STAR株式会社を設立。
主に福祉や生活に関する相談、コンサルティングを行っている。

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