こんにちは、井上 麻佐子です。

ちょっと特別な日のディナーは、フランス料理。

五感を満たすお料理は世界中の人々を魅了し、各国の外交儀礼の時の正餐は、ほぼ「フランス料理」と決められています。

今回は、そのフランス料理の今に繋がる美味しい歴史をお話ししたいと思います。

 

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今では世界が認めた美食の国フランスの料理も、元はと言えば、洗練されたイタリアフィレンツェで供されていた食文化が礎とされています。

その立役者は、花の都フィレンツェからやってきたアンリ2世のお妃 カトリーヌ・ド・メディチ。

彼女がいなければ、今のフランス食文化は全く違っていたと言っても過言はありません。

 

が、私は、二人の結婚をお膳立てした、アンリ2世の父であるフランス王、フランソワ1世のことも忘れてはならないと思っています。

先見の明があり、イタリア文化に魅了されたフランソワ1世は知っていました。

当時、芸術文化の先進都市であるフィレンチェを経済的にも文芸的にも支配していたメディチ家からお妃を迎えること。

それは、その文化の頂点を、生きた人間から学ぶ、またとない機会を丸ごと手に入れることだということを。


そして晩年、イタリアで少々、冷遇されていたレオナルド・ダヴィンチをフランスに呼び寄せたのも、フランソワ1世です。

今ではルーブル美術館で、フランスの宝として大切にされている「モナ・リザ」も「岩窟の聖母」も、アンボワーズに呼ばれたダヴィンチがイタリアから抱えて持ってきたもの。

フランソワ1世のお呼びよせがあったからこそのことなのです。

 

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中世の時代、マナーという概念もなく食事は手づかみで、調理内容といえばローストした肉や茹で野菜、やっとタイユヴァンの考案したシチューが登場したくらいだったフランスに、カトリーヌ・ド・メディチは、ソースやスープ、豊富な食材(ブロッコリ、グリーンピース、アーティチョーク、トリュフ他)調理器具、デザート、リキュール、そして、当時、金にも匹敵する高価な香辛料、砂糖など、今の料理にも欠くことのできない様々なものをもたらします。

さらに、個人用のナイフとフォークを使うテーブルマナーも。

これにより、食事を美しく取れるようになると、それまで男性主体だった宴へ女性たちも招かれるようになり、パーティーはとても華やいだものになっていきます。

 

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時は経て、ナポレオンの時代。

アントナン カレームとオーギュスト エスコフェという2人の史上に残る優れた料理人が登場します。

タレーランやサヴァランなどの研ぎ澄まされた味覚を持ち合わせた、いわゆる「美食家」と言われる人たちの存在により切磋琢磨を余儀なくされた彼らの技術、能力は見事に開花し、フランス料理をさらに洗練させていきました。

 

この時、「食卓外交」という言葉が生まれます。
武器で戦うのではなく、食事の内容、そして、食卓を中心としたすべての調和を芸術として国の美意識のレベルの高さを示したのです。


オーギュスト エスコフェは、それまでいっぺんに供されていた料理に、コースメニューという発想を導入します。 
ルイ14世の時代、豪華絢爛を見せびらかす公開食事は、確かに、一度にテーブルを飾ることで、見た目の迫力はあるかもしれませんが、実際に食べる人は、少々冷めた、または、少々、温まってしまった料理を食べることになるのですから、食べるほうも作るほうも残念です。


エスコフェの指示により、出来立てのお料理を一皿ずつ、一番美味しい状態で提供するという形式が整うと、さらに、そのコースでは、何が食べられるのかわかるように、「メニュー」が登場します。

宴席メニューは、ゴッホ、ルノアールが挿絵を描いたものもあり、大切なものとして、今でも、持ち帰るのがマナーです。

 

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歴史上の人物と思われがちなエスコフェは、今でも高級ホテルであるホテル リッツの設立に尽力し、彼の書いた5000ものレシピが掲載されている「料理の手引き」という本は、文字通り、今なお「手引き」として料理人の育成に使われています。

さらに、彼が考案した「ピーチメルバ」や「牛ヒレ肉のロッシーニ風」は今も現役で私たちを楽しませてくれているのですから、召し上がったことのある方も多いのではないでしょうか。

 

彼らの功績はやがて、ポールボキューズたちが引き継ぐ、「ヌーベルキュジーヌ」という新しいフランス料理へと導かれ、世界の料理法、食材を取りれながら、さらに深みを増し進化し続けています。

 

私たちが当たり前のようにテーブルに座り、メニューを眺め、ナイフ、フォークを使って、バラエティーに富んだ食材によってつくられたお料理を、ベストな状態でいただく。  
そこには、長い歴史とたくさんの人たちの努力と知恵が詰まっているのだと思うと、感謝の気持ちとともに、美味しさも倍増しそうな気がします。

 

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井上 麻佐子 さん ls_inoue

慶應義塾大学 経済学部卒業後、外資系金融業界を経て、イギリス在住時、装飾と生活芸術の世界と出会う。
1998年より、ヨーロッパ上流社会の生活の中での芸術、文化、習慣を学ぶ。
帰国後、花装飾の仕事に携わるとともに、2009年より、The Art of Livingの講座、講演、メディア出演 および、執筆活動を行う。
旅行に行ったり、映画を見たり、絵画を鑑賞したりする、現在に生きる私たちの楽しみが、より深くなる、楽しいヨーロッパの歴史、習慣をわかりやすく紹介。
2014年、2015年と、講座受講者とともに行く、「イングランド、スコットランドのツアー」を開催している。
2008年12月より 株式会社ザ・ブーケ 代表取締役 
現在、白金台にて講座開催。


これまでの講座、講演:
出演 
・ NHKラジオ第1  2013年〜2015年 「ごごまり」レギュラー出演 
〜暮らしに華を〜担当:毎回、ヨーロッパの伝統文化、習慣などを生放送で解説。
・スカイパーフェクトチャンネル シアターTV

 

連載 
・プリティープリザーブド(草土出版) The Art of Living ~ヨーロッパの貴婦人たち〜 
・MY GENERATION アーティストの花

 

講演活動 
三菱地所レジデンスイベント、大丸エリアマネジメントイベント、ロータリークラブ、ゴトウ花店イベント、サンタマリア ノッヴェーラ 他多数

 

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株式会社ザ・ブーケ