素敵な着物姿、穏やかな微笑み―今回お会いした着物センスアップコンシェルジュの薄木 宏子さんは、そんな第一印象。
ですがそんな雰囲気とは裏腹に、お話を伺うと実に波乱万丈な人生を歩んでいる女性でした。
ご両親の離婚により、母親一人に育てられた薄木さん。
その分母親の束縛は厳しく、中学の頃から思い描いていた美容師の仕事に就くことを猛反対され、半ば渋々、生命保険会社に就職をし事務職として9年間働いたそうです。
「好きな仕事ではなかったですが、マニュアル通りに決められた作業をこなすのは、性格的には合っていました」
その仕事に就いている最中、23歳で結婚。
そして、27歳で出産。
このタイミングで仕事を辞め、3年間の専業主婦生活に入ります。
「早く母親から離れたくて結婚したのに、結婚しても何も変わりませんでした」
どうにか母親と別居するための家賃を稼ぎたいと一念発起した薄木さんは、住宅デベロッパーや保険会社、クレジットカード会社など、子育てをしながら立て続けに派遣社員として働いたそうです。
しかし40歳を目前に控えたある日、「派遣社員のままでは、この先仕事はなくなる」と思ったそうです。
「積み上げてきたキャリアなど何もない自分に何ができるのか、何が好きで、何だったらこの先やっていけるのか、真剣に自分の棚卸しをしました」
いきついたのは、「自分は香りが好きだ」ということ。
スイッチの入った薄木さんは、そこからアロマテラピーの勉強に取り組み、資格を取得。
続けてアロマトリートメントの資格も取得。
「よし、これで独立しよう」と思った矢先、母親がアルツハイマーに。
これからというタイミングで、介護という問題が起こってしまいます。
週に一度は病院に連れて行かなければならない状態。家から離れた場所にアロマサロンを作るわけにはいかない。
そこで機転をきかし、出張アロマトリートメントを開始。
自宅まで来てくれるという当時は珍しかったこのスタイルが受け、お客さんはどんどん増えていったそうです。
さらにベビーマッサージも勉強。
当時ベビーマッサージが注目され始めていたこともあり、その波に乗って薄木さんの仕事もさらに忙しくなっていきます。
2006年には、ロミロミを教えていた友人と共同で念願のサロンをオープン。
ビジネスがますます大きくなるタイミングでまたも事件が。
「主人が、今月で会社を辞めると言い出したんです」
何の相談もなくそう切り出された薄木さん。
なんとか思いとどまるよう説得するも、ご主人の意思は変わらず、そのまま無職状態へ。
それ以来家庭内の雰囲気はどんどんと悪くなっていき、最終的には離婚。
サロンを友人に任せ、薄木さんは百貨店で再び派遣社員として働き始めます。
そんな母親に元気になってもらいたいと手に取ったのが、着物でした。
「母は昔、着物に関わる仕事をしていました。昔好きだったものを見たら元気になるかと思って・・・それで私もあらためて着物について知りたいと思い、呉服屋に就職しました」
女将さんに叱られながらも、学びの多い呉服屋での仕事。
やりがいも感じていたそうですが、今度は薄木さん自身が更年期障害に苦しめられることに。
接客もままならない状態になってしまい、退職へ。
そんな時期を超えてはじめたのが、着物センスアップコンシェルジュという今のお仕事。
着付けを教える教室はたくさんありますが、薄木さんが教えるのは着るための方法だけではなく、いかにその人の魅力を上げるかというコーディネート。
「洋服と同じように着物にもトレンドがあります。またご自分が好きな色・デザインと似合うものとは違っていたりします。そういった点を踏まえてパーソナルカラー診断や骨格診断などをしながら、その人の魅力を引き出す着物のご提案をしています」
着物に映えるメイクなども教えてくれる薄木さんのサロンには、30代~50代の女性たちが数多くやってきます。
「特に40代女性にとって、着物は究極のアンチエイジングアイテム。ダイエットせずにスタイルアップできる、体幹を支えるので腰に優しい、姿勢が良くなるので血流が良くなるなどメリットがたくさんあります。
そんな優れた着物を楽しむ人が、もっともっと増えてほしいですね」
プライベートでは現在、年上のパートナーと事実婚をされている薄木さん。
男性側にも離婚歴があり、薄木さん同様子供がいる立場。
それらの事情も踏まえて結婚に踏み切るには、もう少し時間がかかりそう。
「どっちつかずの不安定さを感じるときはありますが、人間的な魅力がある人なので、一緒に暮らしていると豊かな気持ちになれます」
そう言って、穏やかにほほ笑む薄木さんなのでした。
★ソロネーゼへの、7つの質問
― あなたにとって仕事とは?
「それをやることで人の役に立ち、自分が成長していけるのが仕事だと思います。そういう経験をたくさんしたいので、仕事はずっとしていきたいと思います」
― お金は貯める方ですか、使う方ですか? 将来に向けて蓄えていますか?
「生活のために必要な分があればいい、と思っています。お金は基本的に、人のために流れていくものだと思うので」
― あなたにとって住まいとは?(購入派? 賃貸派?)
「若いころは、家は資産だと思っていたので購入派でした。でも今は、そこに愛着を感じられればどちらでも構わないです」
― 結婚については?
「今のパートナーには、自分の人生を生きろと言われているので・・・どうなんでしょう?」
― 夢や目標はありますか?
「自分が死ぬ時に、笑ってあの世に行きたいというのが夢(?)ですね。そこから逆算して、そのためにいますべきことはなにかを考えるようにしています」
― どんな風に歳を重ねていきたいですか?
「パートナーと穏やかに暮らせていけたらいいですね」
― どんな人生だったら、幸せだと思いますか?
「いろいろなことを経験した今は、人は人の役に立っていないと幸せになれないと実感しています。そんなことを心から感じられる人生にしていきたいですね」
薄木 宏子 さん | ![]() |
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株式会社Splendorぷらす 代表取締役社長 着物センスアップコンシェルジュ 派遣コーディネーター、不動産・保険営業、アパレル、美容部員などを経て、アロマセラピスト・ベビーマッサージ講師として2003年に起業。 |