自分の好きなこと、やりたいことを一生の仕事にできたら・・・
そんな、ともすると妄想で終わってしまう夢をしっかりと形にし、35歳を過ぎてから起業した女性たちにスポットを当てるインタビュー。
その第一回目は、Christian DiorやCHAUMETといったブランドショップや帝国ホテル、レクサス発表会、各種雑誌の紙面などを飾る美しいアレンジメントを数多く手掛けているフラワーアーティスト、中居 美和子さんにスポットをあてました。


中居さんはいつ頃から花に興味を持ち始めたのですか?

「祖父・祖母が花好きで、小さいころからごく自然に身の回りに花があったので、いつの間にか好きになっていました。
ただ、花屋になりたいと思ったことはなかったですね」


-学校を卒業していきなり花屋に入ったわけではないんですね?

「はい。大学では微生物の研究などをしていて、その流れでとあるメーカーに就職しました。
ただ最初に配属されたのが販売の部署で、自分のやりたいこととは違っていました」


-新入社員はまず営業から、という典型的なパターンですね。

「そうですね。でもどうしてもその仕事に情熱を注ぐことができず、すぐに別の道を考え始めてしまいました。
自分に何があるかなってあらためて考えたときに浮かんできたのが花でした。
私は思い立つと迷わず動いてしまう性格なのでさっそく会社の帰りにフラワースクールに通うようになりました。
NFDフラワーデザイナーの資格を取るために勉強をしつつ、本当に花の道でやっていけるのかどうかを見極めるつもりでした」


-入学してみて、どうだったんですか?

「意外とあっさり資格が取れてしまい、「あ、これならやっていけるかも」と(笑)。
そこで会社を辞めて、ドライフラワーのお店に転職しました。25歳の時です」


-そのお店での仕事はどんな感じでしたか?

「とにかくメチャクチャハードでした。
そこはとある会社が新規に立ち上げたお店だったんですが、一週間でいきなり店長にさせられ、商品の手配からスタッフの管理、接客、売り上げ管理までをこなさなければならず、始発で通勤し、終電で帰るような毎日でした」


-若くて体力があったから続いたのでしょうね。

「そうですね・・・ただ、花を作ることにかけては情熱を100%注げたんですけど、お店全体の運営という部分はどうしてもモチベーションが上がりませんでした。
それだけが理由ではないんですが、いろいろあって結局一年半で辞めることになりました。
ただ、ひどい環境ではありましたが、「仕事って、ここまでやらないといけないんだ」ということをイヤというほど学んで、生きていくことの大変さを知ることができたので、得るものはあったと思っています(苦笑)」


-辞めた後はどうしたんですか?

「それでもやっぱり花に関わる仕事がしたくて、就職先を探していました。
そのうち、とある花屋に面接に行くことになったんですが、面接まで少し時間があったので、お気に入りだった青山の花屋に立ち寄ったんです。
そのお店にたまたまスタッフ募集の張り紙があったのですが、それを見て直感的に「私、ここに入るな」と感じ、先に決まっていた面接をお断りして、青山のお店の面接を受けることにしてしまったんです」


-ものすごい直感ですね!

「それが実は、日本で本格展開をはじめようとしていたニコライ・バーグマンさんのお店だったんですね。
面接ではニコライさん他スタッフの方々にお会いしましたが、前職の仕事ぶりにはとにかく驚かれました。結局その根性を買ってもらって採用です」


-つらい経験もムダにはなりませんでしたね。

「本当に。
新しい職場では有楽町にあったエストネーションの花部門責任者のようなことをやっていましたが、そこで起こるたいていのことには対処できるようにたくましくなってました(笑)」


-エストネーションでの仕事は楽しかったですか?

「楽しかったですね。高級ブランドのショップオープニングや車の発表会など、大きな仕事もいろいろ体験できたので、すごく勉強になりました」






-でも、28歳の時に辞められたんですよね?

「はい。
すでにその時結婚をしていたのですが、私は物事を100%やりきらないと気が済まない性格なので、家庭と仕事の両立を続けていくことができない気がしていたんです。
なので仕事は辞めて、悠々と専業主婦でもと・・・」


-ところが、そうもいかなくなった

「そうなんです。
いつのまにか、夫が経営する会社に花部門が作られて、いつのまにやらその責任者に。
その後、オリジナルの花ブランド「FLOMA」の開発やら、銀座への出店やらで怒涛の毎日が続くことになってしまい、専業主婦の夢はあっけなく敗れました」


-その延長線上で今の会社を創業することになったわけですね。何歳の時ですか?

「今から3年前、36歳のときです」


-本来はあまり得意ではない、経営者という道を選んだのはなぜですか?

「いろいろと社内的なことはありましたが、一方で私が作る花を心待ちにしてくれるお客さんたちは常にいらっしゃったんですよね。
そういったお客さんの気持ちにしっかり答えていくためには、自分もきちんとした立場で仕事をすべきでは、と思ったのがきっかけですね」


-会社の代表となって変わったことはありますか?

「創業当初はどうしても売上ばかりに目が行っていましたが、続けていくうちにだんだんと、「お客さんに喜んでもらえる仕事をやっていると、お金は後からついてくるな」と自然に思えるようになりましたね」




-商売の神髄ですね。やっぱり花に関わる仕事は楽しいですか?

「楽しいですね。花をアレンジすることもそうですが、それ以上にそれを見て喜んでくれる人がいるというのはとてもやりがいに感じます。
ただ、やはり相当な覚悟が必要なことでもあるので、花を仕事にするのはあまりオススメしませんけど・・・」


-最後になりますが、中居さんにとって「起業する」とはどういうことでしょう?

「起業っていうのは、自分の覚悟を世間に示すことだと思います。
その本気度っていうのはお会いする方には伝わるし、信頼をしていただくことにもつながるように思います。
同時に、おつきあいする人脈の幅も確実に広がりますね。いろいろな情報が入りやすくなってくるので楽しいですよ。
また、仕事のいい面も悪い面も常にダイレクトに受けることになるので、イヤというほど生きている実感を持つことができます(笑)」

 

◆編集部の一言
インタビューから伝わる逞しさや根性とは裏腹に、実際にお会いした中居さんは気取りのない、やわらかな印象。
この人当たりの良さと、アレンジづくりに対する本気度がベストマッチして、多くのお客さんの心を掴んでいるんだと思います。

 

中居 美和子 さん
デンマークの有名デザイナー ニコライ・バーグマン氏の下でチーフデザイナー・店長を務める中で頭角を現し、後に独立。2010年 株式会社Flantesseを設立。
既成概念にとらわれない我流のデザインセンスと色使いは、特に美の最先端をゆくファッション・コスメ業界から高く評価され、数々のファッション誌やブラン ドショップにアレンジメントを提供しており、最先端のデザインを創り続けるフローリストといわれ、数々のメディアにて紹介されている。
一方で、花の色彩心理効果とアロマ香能を組み合わせた、新しいタイプの「機能を持つフラワーアレンジメント FLOMA」の開発に取り組むなど、植物のもつ色彩や香りが人にもたらす影響に関しても造詣が深い。

◆中居 美和子ブログ「miwakoの花日記」