怖くないわけがない。
でも、インドに行って人生観が変わったという人に何人か出会い、どうしてもインドに行きたくなった。
それも一人で。

 

ツアーでの参加は面白くないと思い、航空券とホテルとガイドだけを手配しての旅行。
首都のニューデリー、タージマハル、そして一番のメインであるインドの聖地ヴァラナシと場所を絞った。
航空券が手元に届き、わくわくしていた。 が、いざ出発当日、空港まで着くと急に怖くなった。
このままバスに乗って家に帰ろうか・・・何て事も考えたりして、入国審査最終時間ギリギリまで戸惑い、「よっしゃ、この目で人生観が変わったという場所を見に行くぞ!」と奮起を入れて飛行機に乗ったことを今でも覚えている。

 

そしてニューデリーに到着。

待っていたのは、浅黒い肌に真っ白な歯を見せた笑顔の男性ガイドさんだった。
一目で「この人は悪い人じゃない」って本能で分かったし、とっても安心した。
ホテルまでの道中、あまりのカルチャーの違いに驚いた。
ガイドブックにもあった通り、車と共に牛が道に普通に歩いたり寝転んだりしていたからだ。
当然日本では有りえない光景だった。 初日は疲れを癒すため早くに就寝。

 

翌日は午前中そのガイドさんに案内され、一通りニューデリーを回り一緒にランチを取った後、フリーになった午後、一人でニューデリーを歩き回った。
日本人女性が一人で歩いているのが珍しいのか、現地の人たちの視線が一気に注ぎ込まれて、正直ちょっと怖かった。
屋台もたくさんあって、日本では味わう事の出来ないインドのB級グルメも食べた。
今思えば食中毒を起こす危険もあったので、ずいぶん無茶したなぁと思う。

 

そして翌日、メインであるヴァラナシへ飛行機で向かった。
約1時間の飛行だ。ヴァラナシでは3日間の滞在になり、現地の別ガイドさんが色々案内してくれた。
そこら中にあるヒンドゥ教の寺院やイスラム教のモスク。どこもたくさんのお供え物や人でいっぱいだった。
平日の昼間から。。。道端にはハンセン病を患った人が座って物乞いしていたり、ピクリとも動かないで寝ている人もいた。とてもショックだった。
異様な香りが立ち込める中、いよいよ聖地ガンジス河へと到着。 凄い!!何これ? すごい光景に圧倒された。
たくさんの人達がお祈りを捧げながらガンジス河の水を頭から顔から、もう全身に浴びている。
とても神聖だけど、でもとても悲しげな光景に、カルチャーショックを受けた。 河の水はとても汚く色んなものが浮いているし、先の方へ目をやると牛の死骸や何やら人サイズの包みみたいなものも流れていた。
ガイドさんの話によると、火葬するにもお金がかかるため、貧困者たちはそのまま死体を河に流すのだと。
その河の水を「神聖な水」として、お祈りし、全身に浴びるのだ。
生きる糧としてこの川を訪れ、死者は聖なる河に流される。生と死が混在している場所なんだなと思った。

 

ガイドさんにお願いして、翌日もまたガンジス河を訪れた。
ショックなくせに、どうしてもまたあの悲しげな光景が見たくてたまらなかった。
ランチを食べたらまたガンジス河へ。
夕方のガンジス河は真っ赤な夕日が照らされて、河にはお祈りで捧げられたお花やろうそくが下流へゆっくり流れていく。
涙が出るほど神聖な場所なのだ。 いつか絶対またガンジス河を訪れたい!
そしてニューデリーに戻り、待っていたのは同じガイドさん。 彼の顔を見てなぜか涙が出るほど安心した。
夕飯はそのガイドさんと一緒に取り、ヴァラナシでの出来事をたくさん話して、ほぼ私一人が話していたかも。
とても仲良しになれた。

 

翌日タージマハルを見に行った。 こちらも世界遺産という事で、とても楽しみにしていた。
想像以上の素晴らしい建造物で、すべてが計算通りに建てられていて、時代とのミスマッチにとても感動した。
ほぼ半日を通してその場にいたわけだけど、やはり夕方が一番輝いていた。
夕方、夕日が一番切なく輝く場所は他にあるだろうか? 残りの日をニューデリーでガイドさんと共に過ごした。
あまりにカルチャーショックの多い滞在だったので、最後のニューデリーはホテルで持ってきた音楽を聴きながらのんびりと過ごした。
早く帰りたいような、帰りたくないような、でも確実に私の中の何かが変わったインド旅行。
同じガイドさんに空港まで送ってもらい、そこで搭乗までの2時間、本当に色々なお話をした。
昔からの友達のように。 これで彼ともお別れ。本当に本当にお世話になった。
お互いのメールアドレスを交換して、私は飛行機へ搭乗した。
見えなくなるまで、白い歯を見せて笑っていた。ありがとう。ありがとう。

 

成田へ到着。
こんな安心感に包まれたことは無かったけど、あまりの文化の違いに改めて、この1週間は嘘だったんじゃないか?という気持ちだった。
でも確かに数時間前まで私は、あの異国にいたんだ。
道端に牛が、そしてハンセン病に感染した死を待つ人たちが普通にいる国に。
日常を取り戻した今、あれから9年くらい経つけど、インドは今どう変化を遂げているのだろう?
でもきっとヴァラナシはあのまま変わらずに、生と死の混在した神聖な場所だろう。
そして今もまだそのガイドさんとはメールやFacebookで連絡を取り合って、お友達だ。
いつか必ず、今度は子供も連れて、絶対にインドに戻りたい。それを楽しみにしている。