イタリア男が女好きだというのは有名な話。

私のような日本では男性から相手にされないタイプの女にとっては、イタリアは夢のような国です。


町を歩けば工事現場のおじさんに声をかけられ、横断歩道で信号が変わるのを待つ間にも車の中から声をかけられる。
バールに入ればウェイターから誘われ、道を尋ねれば、一緒にコーヒーでもどうかと誘われる。


だけど、現実は甘くない。 彼らにとってナンパはあいさつのようなもの。
一人歩きの女性に声をかけないのは、失礼だと思っているとか、いないとか?
そして女性が誘いに乗れば、あわよくば・・・という下心があるらしい。
そして驚くことに、彼らは生涯現役。老人だからと言って、油断は禁物なのです。

 

塔が立ち並ぶ美しい風景で有名な小さな町、サン・ジミニャーノを目指して移動していたときのこと。
フィレンツェから電車でポッジボンシという小さな駅まで行き、そこからバスでサン・ジミニャーノに向う予定だったのですが、交通の便が悪く次のバスは一時間以上先。
仕方なく駅前のベンチに座って待っていると、一人のおじいちゃんが声をかけてきました。
その日は日曜日。

おじいちゃん曰く、日曜日はバスは来ないよ、バスの運行表はあてにならないよと。
タクシーもいない小さな駅、どうしたら良いのか途方に暮れていると、おじいちゃんが自分の車で連れて行ってくれるというのです。
おじいちゃんの親切な申し出を、特に何も考えずありがたくお受けすることにしました。


ところが駅から10分ほど車を走らせたところで、急におじいちゃんが車の調子が悪いと言って路肩に駐車。
そして、とつぜん私にキスを求めて来たのです!


ぎょえーーーっ!!!!

 

大声で威嚇し、はっきりとその気は無い事を告げ、ここで降りて歩きますっ!と言い放ったところ、おじいちゃんはしぶしぶ降参。
ぶつぶつ文句を言いながらも、私をサン・ジミニャーノまで送り届けてくれました。
おじいちゃんとはいえ相手はイタリア男、しかも知らない人の車に不用心にも一人で乗ってしまった事を深く反省したのでした。

 

また、あるときはイタリア中部の町、聖フランチェスコ生誕の地として有名なアッシジにて。
町の通りを散策していると、水彩画がたくさん飾られた小さな画廊がありました。
店の表のスタンドに、それら水彩画のポストカードがたくさん並べられて売られていたので、素敵だなと思って眺めていると、店の中から店主らしきおじいちゃんが出てきました。 (またもや、おじいちゃん)


一人旅だという事を告げると、記念にポストカードを1枚プレゼントしてくれるとのこと。
嬉しくなって夢中でカードを選び、これにしますっ!と笑顔でおじいちゃんに顔を向けると、突然、おじいちゃんが私の顔を両手でがっちりと挟み、なんと無理矢理ディープキス! おじいちゃんのキスはサラミ味。
そういえば、じいちゃんさっき店の中でサラミ食べていたなと、どうでも良いことが頭を駆け巡り、突然の出来事に何が起こったのかわけがわからず、ただ手をバタバタとばたつかせることしかできませんでした。
満足気なおじいちゃんが追加でもう1枚プレゼントしてくれると言うので、あわててもう1枚選び、そそくさとその場を後にしました。 (転んでも、タダでは起きないワタシ)


減るものでは無いし、別に良いか・・・ おじいちゃんはああやって観光客をカモにして、人生を楽しんでいるのだと、自分を納得させようとしましたが、今でもキスのお駄賃の2枚のカードを見るたびに、何とも言えない複雑な心境になるのでした。