「おいしいバナナが食べたい!」
それが、台湾行を決めた理由の一つでした。


何もわざわざ現地にまで足を運びバナナを食べることはないだろうと、私の誘いに誰ものってきてはくれませんでした。
それに、どうしてなのか私の周りには、 旅行好きが一人もいませんでした。
ですから、私はいつもなんとなく浮いていて、洋服にも車も買わない「少々変わり者」のように思われていたようです。
それでも、仕事の休みが取れないということもあり、2泊3日の短い一人旅でしたが、とても楽しい旅になりました。

 

私は田舎に住んでいることもあり、成田空港に行くまでにもだいぶ時間がかかります。
その時の私は若さと元気もあったので、多少の不便は我慢してなるべく安 く旅行しようと決意。
仕事が終わると夜行バスで東京に向かい、そこから空港に行くことにしました。

 

実は、成田空港に行くのはこれが初めて。テレビのニュー スとウワサでしか聞いたことがない空港です。
右も左もわからない上に方向音痴の私が、広い空港で目的を果たすのも一苦労でした。
それでもなんとか手続きを 済ませ、飛行機に乗ることができました。

 

台湾の空港に到着すると、しっとりとした感覚がありました。小雨が降っていたのです。
台湾といえば、南国フルーツでも有名です。
かなり暑いイメージがあっ たのですが、10月という季節もあってか、穏やかな気候に感じられました。
ただ、明らかに日本には無い香りが辺り一面を覆い尽くしていて、アジアに来たのだとしみじみ思ったことを覚えています。

 

利用したホテルには、九州地方からやって来た修学旅行生たちの姿も見えました。
自分が子供の頃は、子供が海外に行くことはそれほど多いことではありませんでした。
しかし、今やこんなに若い子供たちが海を渡って来るのです。時代は変わったんだなと感じました。
どの子も明るくて礼儀正しくて、私にも挨拶をして くれました。

 

eps_20160322_1台湾は、本当に見どころの多い国です。台北だけでも、たくさんの観光スポットがあります。
中でも私が感動したのは、忠烈祠で見た衛兵の交代式でした。
決められた時間になると、一糸紛れぬロボットのように歩き出し、次の担当衛兵と交代するのです。
それを見ている観光客は、誰一人言葉を発する人がいません。
皆、その様子にくぎ付けになっていました。ものすごい迫力に圧倒され、私は本当に驚きました。

 

又、台湾はおいしいものがたくさんあることでも有名です。
高級レストランもいろいろあるのですが、私はあえて庶民的なお店に入ったり、屋台で食事をとるよ うにしました。
唯一宿泊しているホテルで食べたのは、トマトのようなものが入っているパフェとビール。
これをたった一人で頂きながら、異国にお思いを馳せ てみました。

 

屋台では張り切りました。
胃腸には、人一倍自信がある私です。思い切って気になるものを注文してみました。
から揚げのようなものや臭豆腐、それに道端で 売っていたクレープにネギやトウガラシのような辛いものが塗ってあるものも食べました。
日本のものと比較すると、かなり薄い味付けのような気がしましたが、病み付きになるような味でした。
どれもこれも、驚くような安い金額なのです。
そして、売ってる人たちの笑顔も、とても素敵で嬉しいものでした。

 

いつも、私は海外に行くとファーストフード店に入ってみます。
そこに行けば、なんとなくその国の若者の雰囲気が感じられるような気がするからです。
台北で ももちろん入ってみました。
そしてそこで感じたのは、勉強している若者が多いということでした。
私も日本のそれに何度も足を運んでいるのですが、これまで 一度も勉強なんかしたことがありません。
しかし台北で見たものは、教科書を広げている若者の姿でした。
もしかしたら日本の都会であれば同じ光景が見ら れたのかもしれませんが、田畑ばかりの田舎暮らしの私には、それがまぶしい光景だったのです。
きっと将来、この国は素晴らしい発展を遂げていくだろうな。 そんな風に思いました。

そして、それが私にとっても良い刺激となったのです。


それから半年後、私はそれまでの仕事を辞め、語学勉強ををするため中国に留学することになります。
も う一度、本気で勉強したいと思ったのです。
貯金のほとんどを注ぎ込んで、私は一人中国行きの船に乗り込みます。
あれから20年が過ぎ、今私は心穏やかに暮らしています。
だいぶ遠回りしてしまった人生ですが、語学は私の人生に確かに役立っています。


やりたいことをしてきました。
そういえば、あの台湾一人旅で は、バナナを食べそこないました。
台湾の地に降りてからすぐに、バナナのことは忘れてしまいました。
しかし、あの旅で私はもっと素晴らしいものを手に入れたように思います。
うまく言えませんが、あの時の私に一番必要だったものだったような気がしています。

 

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